#1919 / JPCAショー2019(その2)

 多少ダウンサイズとなってしまった今年のJPCAショーですが、技術的にはたくさんの新技術、新製品を見ることができました。特に、フレキシブル基板に関連する分野では、新しい業界のトレンドを見ることができました。しかも、中堅のフレキシブル基板メーカーが、新技術、新製品を積極的に出しているのが目につきました。
 最初のキーワードはウエラブルです。今年は、何社かのメーカーが伸縮性のフレキシブル基板を出し、デモンストレーションをしていました。回路の構成はメーカーによって様々です。オーソドックスなアプローチは、細長いフレキシブル基板をスパイラル状に成形する手法です。導体は銅箔です。この手法であれば、安定した導体抵抗が得られますが、回路が大きくなってしまいます。これに対応するアプローチが、ウレタンゴムのような伸縮性のベース材料を使う方法です。導体としては、銅箔をエッチング加工する方法と、伸縮性の大きい導電性インクをスクリーン印刷する方法が提案されています。いずれの場合でも、導体抵抗を安定させるために、回路は蛇行させています。課題はカバーレイになりますが、各メーカーとも手の内を明かしてくれません。汎用性のあるカバーレイ材料ができていないのかもしれません。
 次は、透明な耐熱性のある透明フレキシブル基板です。これも、何社か複数のメーカーが透明なポリイミドフィルムをベースにした回路を出展していました。これらの回路メーカーは、ラミネートメーカーから銅張積層板を購入し、銅箔をエッチング加工しているとのことです。残念ながら、材料メーカーは、透明ポリイミドベースの銅張積層板を出展していなかったので、確実なところはわかりませんが、複数の銅張積層板メーカーで供給体制ができているとのことです。ここでも、カバーレイ材料が課題になっています。とりあえず、回路メーカーとしては、透明ポリイミドフィルムに接着剤を塗布した、フィルムカバーレイを使っているようですが、この構成では、透明ポリイミドフィルムの、せっかくの透明性、耐熱性を犠牲にしていることになります。回路メーカーとしては、スクリーン印刷が可能な、透明ポリイミド樹脂の実用化を待っていることになります。材料メーカーとしては、透明なポリイミドインクの開発を進めているようですが、実用化までには、もうしばらく時間がかかりそうです。
 3番目の話題は、5Gです。今年は、高周波領域でロスが少ない、言い換えれば、低い誘電率と誘電損失の絶縁材料を使ったフレキシブル基板が多く出展されました。具体的には、ベース材料として、LCP(液晶ポリマー)フィルムが、その候補として挙げられています。液晶ポリマーフィルムが、フレキシブル基板用材料として、商品化されたのは、1990年代のことですから、素材メーカーとしては、20年以上も機会を待っていたことになります。ところが、市場の動きは速く、現在生産が需要に追いつかない状況が続いているとのことです。なかなか、需給バランスをとるというのは、簡単ではないようです。

 次回も、技術的な面でのトピックスの続きを紹介します。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. DIGITIMES(台湾の業界メディア)6/21
 電子機器の組み立てメーカーが、東南アジアに製造拠点を移す中で、台湾の基板メーカーは、中国から工場を移転するのに消極的。

2. Foxconn(台湾のEMS最大手)6/24
 会長のTerry Gou氏が、最大の顧客である米国アップル社に対して、もっと台湾での直接投資を増やすように要請。

3. FlexEnable(英国のベンチャー企業)6/26
 全くガラスを使わず、有機化合物だけで、フレキシブルディスプレイを作ることに成功。自動車用ディスプレイとして大きな可能性。軽量、安価。

4. Apple(米国のエレクトロニクス大手)6/25
 iPhone 11シリーズにquantum dot cameraを搭載する計画を断念。コストアップが大きな要因か?

5. MIT(米国の工科大学)6/26
 3D印刷技術を使って、患者の肘や膝に合わせたカスタムメイドのサポート用フレキシブルメッシュの製作に成功。

6. Pegatron(台湾のエレクトロニクス大手)6/27
 米中の貿易摩擦の影響をさけるために、アップル社むけの製品を組み立てる工場を、インドネシアのバタムに新しい工場を開設へ。

7. IPC(米国のプリント基板業界団体)6/27
 5月における北米のプリント基板産業は、前月比で、出荷額、受注額とも増加するも、B/Bレシオは、0.99まで下落。

8. Apple(米国のエレクトロニクス大手)6/28
 デスクトップPCの新しいモデル、マックプロの生産は、米国から中国に移す計画。

9. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)7/2
 最近報じられている新発売のスマートフォンGalaxy Foldのトラブルについて、CEOのDJ Koh氏が陳謝。

10. Foxconn(台湾のEMS最大手)7/2
 Terry Gou氏の退任に伴い、Young Liu氏が新しい会長に就任。新しい経営陣がスタート。当面Gou氏は経営陣のメンバーとしては残る。

11. MasterBond(米国の接着剤メーカー)7/2
 熱伝導性の高い、新しい2液性エポキシ樹脂EP29LPAOを発売。大きいサイズのポッティングや封止に最適。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*3月26、27日技術セミナー「フレキシブルエレクトロニクス最前線、応用市場の現状と将来、材料・生産技術の最新動向」工業技術研究院、台湾新竹市、     
   申込みが定員を越えましたので、受付を締め切らせていただきました。

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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