#1921 / JPCAショー2019(その3)

今年のJPCAショーでは、厚膜印刷タイプのフレキシブル基板では、なかなか見るべきものがありました。画期的な技術というほどのものではないのですが、これまでのプリント基板技術では難しかったことができるようになっているところ価値がありそうです。
 これまで、厚膜印刷回路といえば、片面構成で、ラフな回路というのが、共通認識でした。ところが、最近の印刷技術と、印刷インクの性能の進歩はめざましく、銀インクで、幅50ミクロンの回路を量産することは、かなりの高い歩留まりでできるようになっているようです。小規模の量産であれば、30ミクロンの回路も形成が可能だとしています。スクリーン版メーカーは10ミクロン未満の線幅が可能だとのことです。
 多層化技術も進んでいます。両面ビアホール構造は、もうそれほど難しいものではなく、ビアホールの径も100ミクロン未満が実現しています。そもそも、厚膜回路技術にとって、多層構造は得意とするところなので、さまざまな多層構造が提案されています。多層の中に、導体層だけでなく、絶縁層や機能材料層も入れれば、軽く十層ぐらいになってしまいます。こうなると、寸法管理や位置合わせ技術がキーになってきますから、出来上がった回路のパタンズレをチェックすれば、だいたいそのメーカーの加工能力が推定できます。この分野では、実績が多い台湾メーカーが先行しているようです。
 これまで、厚膜回路の本質的な欠点とされていたのが、銅箔回路に比べて、桁違いに大きい導体抵抗です。これを一気に改善する技術が提案されています。コロンブスの卵的な単純なアイデアですが、厚膜導体の上に、金属銅を薄くめっきする工法です。めっきの厚さにもよりますが、1ミクロン未満のめっき厚さでも、導体抵抗が一桁以上小さくできる可能性があります。私自身以前に検討したことがあるのですが、めっき処理をしてくれるメーカーがなく、保留になっていました。しかし、複数の回路メーカーが試みていますので、今後大きく伸びることが期待されます。
 なお、厚膜回路への銅めっき処理がもたらす影響として重要なのが、銀マイグレーションの抑制です。これは、余禄的なメリットですが、回路にマイグレーション対策をしなくても良いとなると、技術的なものだけでなく、コストの上でも大きなメリットになります。
 厚膜印刷回路のメリットとして大きいのが、基材や導体の選択肢が多いということがいえることです。添付した写真の例では、大面積の布地にスクリーン印刷で、圧力センサーアレイを形成しています。人が睡眠中に、マットレスにかかる荷重がどのように変化するかを見ようとするものです。ベッドの中に、汗による湿気がこもらないように、通気性の良い布地を基材として使っています。

 次回も、技術的な面でのトピックスの続きを紹介します。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. Gartner(米国の市場調査会社)7/17
 2018年における世界のデバイスの出荷は、22億ユニット。2019年には3.3%の減少を予測。

2. Apple(米国のエレクトロニクス大手)7/17
 2020年にリリースされるiPhone11では多くの画期的な新機能が盛り込まれる予想。5G、バッテリー容量の増大なども。

3. Aubum University(米国)7/18
 両面スルーホール構成のフレキシブル基板へのBGA部品搭載に際しての、熱ストレスと信頼性を詳細に解析。

4. Foxconn(台湾のEMS最大手)7/19
 中国の製造工場を他の国々へ移転するという噂を否定。大規模なレイオフの予定はない。同社は、31年前から中国で投資している。

5. FLEX(シンガポールのEMS大手)7/19
 中国のHuaweiのサプライチェーン中最大のEMSである中国のChangsha工場の生産を停止へ。

6. TSMC(台湾の半導体メーカー大手)7/22
 次世代の通信技術5Gは、半導体の5nm, 7nmプロセス稼働のトリガーとみて、2019年中に110億ドルを投資。

7. Apple(米国のエレクトロニクス大手)7/22
 2020年にリリースされるiPhone 11には、120HzのOLEDパネルを搭載の計画。

8. Huawei(中国の通信機器メーカー大手)7/22
 過去8年以上に渡って、秘密裏に北朝鮮のワイヤレスネットワークの構築に協力。

9. Microsoft(米国のソフトメーカー最大手)7/22
 AI技術構築のために、2015年にサンフランシスコの設立されたOpenAIに10億ドルを投資。

10. Gartner(米国の市場調査会社)7/22
 2019年における世界の半導体市場は、2018年の4750億ドルから、9.6%縮小すると予測。DRAMの価格は42%下落。

11. Apple(米国のエレクトロニクス大手)7/23
 次世代の通信規格5G用に、Intel社のスマートフォンモデム用チップの事業を買収する交渉中。買収額100億ドル以上か?

12. Circuit Foil(ルクセンブルグの銅箔メーカー)7/23
 50GHz以上の高周波で使われる基板用に、表面のプロファイルが1.25ミクロン未満という、極めて平滑な銅箔を実現。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*10月7日、技術セミナー「1日速習! ウエラブル時代の印刷エレクトロニクス技術、〜基礎から材料・加工技術・プロセスの最新動向、応用展開、国内外のマーケットまで〜」情報機構、東京大井町きゅりあんhttps://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC191002.php

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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