#1923 / JPCAショー2019(その4)

 今年のJPCAショーは、つまみ食い的に見ただけなので、全体をレビューできるような立場にはないのですが、フレキシブル基板に関連して目についたことがあります。それは、フレキシブル基板の信頼性を評価する試験装置のデモンストレーションが複数見られたことです。近年、フレキシブル基板の品質保証については、全数オープンショート試験が実施されるようになってきていますが、完成した回路の物理物性となると、メーカーとしてはなかなか手が出ないのが実情のようで、材料メーカーから提供されたデータシートで間に合わせるケースが少なくありません。中小のフレキシブル基板メーカーでは、標準的な試験設備も不十分で、担当する技術員さえ置いていない状態です。そのような中で、汎用性のある試験装置が商品化されてきているということは、大げさにいえば、業界全体のボトムアップに繋がることといえるでしょう。
 私が興味を持ったのは、ふたつの装置メーカーの製品です。ひとつはユアサ・システムズという装置メーカーのフレキシブル基板の機械的信頼性の評価装置です。(大手バッテリーメーカーのユアサとは関係ないそうです。)

 フレキシブル基板の機械的特性というと、IPC摺動試験、MIT折曲げ試験が頭に浮かびますが、このメーカーの装置は、アタッチメントを交換するだけで、ふたつの試験はもちろん、最近需要が増えている伸縮や捻れなど複数のモードで耐久試験ができるという優れものです。装置自体はコンパクトで、ジム机の上に収まる程度です。なかなか使えそうな装置です。
 もうひとつは、マイグレーション試験装置です。(不覚にもメーカーの情報を紛失してしまいました。心当たりのある方は教えてください。)マイグレーションとは、回路間に電位があると、導体の金属原子がマイナス側に移動する現象で、特に高温高湿の環境で著しく、放っておくと絶縁不良、短絡事故にいたります。このマイグレーション現象は、導体が銀の場合に著しく、銀インクを主要導体とする厚膜印刷回路では、深刻な問題になります。ところが、厚膜回路メーカーで、マイグレーション測定装置を備えているメーカーは決して多いとは言えない状況です。この装置メーカーの製品は、連続絶縁抵抗測定装置に、高温高湿チャンバーを備えていますが、コンパクトにまとまっています。この試験装置メーカーでは、受託試験も対応しているとのことです。
 ここでは、ふたつの試験装置しか紹介できませんでしたが、フレキシブル基板の試験項目は、他にもたくさんあります。今後、フレキシブル基板には新たな機能が付け加えられることが予想されます。材料メーカーや回路メーカーは、単に製品を作るだけでなく、その特性を評価する技術を確立し、できれば一般に公開してほしいものだと考えます。長期的には、そのメーカーの価値を高めることになりますし、業界全体のレベルアップにもなります。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. Apple(米国のエレクトロニクス大手)8/17
 アップルウォッチの次期モデルにおいては、外装にセラミック材料とチタンを採用する見込み。

2. DIGITIMES(台湾の業界メディア)8/20
 中国における第2四半期のスマートフォンの出荷は9340万台で、前期比22.4%の増加、前年同期比では1.6%の減少。

3. Intel(米国の半導体メーカー最大手)8/20
 イスラエルのハイファで開発した最新のプロセッサーSpringhillを発表。大型コンピュータの最初のAIチップ。10ナノメータルールで製作。

4. DIGITIMES(台湾の業界メディア)8/21
 アップル社の2019年の新しいiPhoneモデルの発表を9月に控える中で、今年の出荷台数は、7千万台に留まるとの予測。

5. Nokia(フィンランドの通信機メーカー)8/23
 2020年に低価格帯の5Gスマートフォンを発売する計画。500〜600ドルの目標。

6. Tesla(米国の電気自動車メーカー)8/23
 中国での電気自動車生産において、韓国のLG Chem社からバッテリーの供給を受ける方向で交渉中。

7. Apple(米国のエレクトロニクス大手)8/26
 米中の貿易摩擦の影響は深刻で、中国での生産に打撃。440億ドルの損失。

8. DIGITIMES(台湾の業界メディア)8/26
 米国による部材供給障害にも関わらず、台湾における中国ファーウェイのスマートフォン販売はシェア6.6%まで回復。

9. McDermidEnthone Electronics(米国の化学品メーカー)8/27
 次世代の高速通信機器用の高密度多層プリント基板を形成するための、新しいセミアディティブプロセスを開発。

10. Atotech(ドイツの化学品メーカー)8/27
 埋込受動部品、能動部品の構築にあたって、多層基板用のコンポジットタイプの絶縁誘電体材料を提案。

11. Gartner(米国の市場調査会社)8/27
 第2四半期における、世界のスマートフォンの出荷は、依然としてマイナス成長が続く。大手3社のみがプラス成長。

12. TE Connectivity(米国の部品メーカー)8/27
 PETベースの新しいカスタムメイド耐熱性粘着性ラベルPR115を商品化。使用可能温度−40℃〜+150℃。UL969対応。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*10月7日、技術セミナー「1日速習! ウエラブル時代の印刷エレクトロニクス技術、〜基礎から材料・加工技術・プロセスの最新動向、応用展開、国内外のマーケットまで〜」情報機構、東京大井町きゅりあんhttps://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC191002.php

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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