#1925 / 最近の台湾プリント基板市場

 以前に何度かご紹介しているように、台湾のプリント基板産業の動向は、世界の民生エレクトロニクス業界の先行きを予測する上での先行指標となっています。
今回の、半導体をはじめとする世界のエレクトロニクス産業の低迷についても、いち早くその兆候を示していました。(添付した台湾プリント基板産業の出荷動向、世界の半導体製品出荷動向のグラフをご参照ください。)
 グラフの読み方には、ちょっと予備知識が必要かもしれません。台湾の民生用エレクトロニクス製品の出荷は、毎年上半期はゆっくり立ち上がりますが、下半期は欧米のクリスマス商戦へ向けて、連続的に増大していきます。ちなみに、グラフではいずれも2月には大きく下落していますが、これは旧正月休暇による減産によるもので、毎年起きます。このように、台湾のプリント基板の出荷は、1年を1サイクルにして繰り返しながら、毎年成長を続けてきました。

 
 ところが昨年下半期の場合は、例年に比べて様子が違っていました。第3四半期までは順調な成長を遂げているかのように見えていたのですが、第4四半期に入ると、成長が止まってしまい、12月には大きく下落となりました。どう見ても、これは異常事態です。毎月、台湾プリント基板出荷データは、翌月の中旬には発表されます。これに遅れること2、3週間で、世界の半導体製品の出荷データが発表されます。昨年の場合、10月までは順調に伸びていましたが、11月には伸びが止まってしまい、12月には大幅下落となりました。これがトリガーとなり、世界の半導体業界は、2008年からの世界同時不況以来の低迷となります。

 業界のアナリストの多くは、2019年の下半期には反発し、2020年には回復に向かうとの見方をしています。しかしながら、最新の市場データを見る限り、楽観的な見方はできなくなってしまいます。まず、半導体の出荷動向は、連続減少傾向こそ止まったものの、はっきりした反発には至っていません。現状が踊り場的な状態で、今後再び減少に向かう可能性がないわけではありません。半導体のもっとも大きな需要家であるスマートフォンは、3年連続の減少が続いており、短期的に反発してくる可能性はなさそうです。スマートフォンの減少分を補ってあまりあるような新製品は見当たりませんし、話題の5G製品が、販売数に寄与するにはまだ時間がかかりそうです。
 台湾のプリント基板業界も、楽観的な見方はできなくなっています。7月に至って、出荷額は増加傾向になっていますが、前年同月比ではマイナス成長状態が続いています。プリント基板用の材料の出荷も低迷しています。さらに悪いことには、設備投資が非常に低いレベルに留まっています。このような状況は、プリント基板メーカーが、今後の需要について楽観視していないことを意味しています。台湾のプリント基板メーカーは、世界のエレクトロニクス生産センターともいえる、台湾のEMSメーカーと密接な情報網を構築しており、高い正確度でエンドユーザの資材調達情報を得ています。したがって、エンドユーザの販売予測や計画に変更があると、短時間の内に情報が基板メーカーに伝わります。その台湾基板メーカーが、今後の受給バランスに「守り」の姿勢を固めているわけですから、世界の民生エレクトロニクス市場の低迷は、しばらく続くと見るべきでしょう。メーカーによって、状況は違っているでしょうが、それぞれ然るべき対応策をこうじることが必要になっています。時間的余裕はあまりないでしょう。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. IDC(米国の市場調査会社)8/28
 2019年第2四半期における世界のスマートフォンの組立数は、前期比11.9%増の3億3260万ユニット。市中在庫が減少。

2. University of Utah(米国)9/4
 シリコン半導体が発する廃熱を、電気的なエネルギー源として活用する技術を開発。

3. UPS(米国の宅配サービス会社大手)9/4
 同社使用のトラックを、順次カスタムメイドのハイブリッド車(ディーゼル/電気)置き換える計画。新しい電池の寿命は従来品の3倍。

4. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)9/3
輸入手続きが難しくなる日本製の半導体エッチング材に替えて、国内メーカーの製品の使用を開始。

5. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)9/3
 折り曲げ可能なディスプレイを装備した最初のスマートフォンGalaxy Foldは、9月6日にまず韓国で発売へ。

6. Google(米国のIT企業大手)9/4
 スマートフォンの新しいOSアンドロイド10をリリース。多くの新しい機能を盛り込む。

7. Foxconn(台湾のEMS最大手)9/5
 米国ウィスコンシン州に建設中の新工場で最初に製造する製品は、空港のカフェテリア用のロボットになる見込み。

8. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)9/9
 新たに販売を開始した折り曲げ可能なディスプレイを装備したGalaxy Foldは売れ行き好調。完売状態。

9. IDC(米国の市場調査会社)9/9
 2019年における世界のスマートフォンの出荷台数は、前年比0.4%減少になると予測。販売額は2.2%の減少。2020年には1.6%のプラス成長を予測。

10. IDC(米国の市場調査会社)9/9
 2019年における世界のウエラブルデバイスの出荷は、前年日85.2%増の6770万ユニットに達する見込み。耳に装着するデバイスが急成長。

11. Apple(米国のエレクトロニクス大手)9/10
 スマートフォンの新しいモデルシリーズiPhone11を発表。カメラ機能を大幅に向上。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*10月7日、技術セミナー「1日速習! ウエラブル時代の印刷エレクトロニクス技術、〜基礎から材料・加工技術・プロセスの最新動向、応用展開、国内外のマーケットまで〜」情報機構、東京大井町きゅりあんhttps://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC191002.php

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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