#1927 / 道遠し、日本のエレクトロニクス産業の復活

 先週、再建中の日本のディスプレイメーカー大手JDI(株式会社日本ディスプレイ)が、出資を想定していた中国企業が手を引くことになり、再建計画を見直すことが余儀無くされているとのニュースが流れました。またか、という思いを持たれた方々は、少なくないでしょう。サンヨー、シャープ、パイオニア、東芝、エルピーダメモリー、ルネサスエレクトロニクス等々、この10年間で破綻したか、しかけた大手エレクトロニクス企業は、枚挙にいとまがないような状況です。かつて(1970〜80年代)世界のエレクトロニクス市場を席巻するほどの勢いがあった日本のエレクトロニクス産業の凋落ぶりは目を覆いたくなります。悪いことには、これらの企業の経営者から、まともな再建策が出てこないことです。海外の投資家から、見切りをつけられるのも当然といえるでしょう。
 高度経済成長時代には、同じ業種に大手メーカーが10社以上あっても、それぞれ成長することが可能でした。かつての通産省のリードによる、護送船団方式が、企業間のバランスをうまくとっていました。新しい冒険も、「みんなで渡れば怖くない。」という、今にしてみれば妙な企業間の信頼感がありました。
 ところが、この仲良しクラブが、事業を海外に展開するにあたって、摩擦が出てきました。新興の海外メーカーが、安い人件費を活用して、エレクトロニクス市場に侵入してきたのです。初期においては、日本メーカーのブランドや、高い品質によって、市場のシェアを維持することができました。しかし、この二十年間で新興メーカーといっても、経験を積むにしたがって、品質は向上し、着実に市場でのシェアを伸ばしていきました。気がつけば、海外市場での日本ブランドのエレクトロニクス製品のポジションはマイナーなものになっていました。具体的な例はいくらでも挙げることができます。テレビ、ビデオ、携帯電話、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、半導体、ディスプレイ、電子レンジ、白物家電、等々。日本メーカーとしても、指を加えて見ていたわけではありません。それなりの手を打ってきてはいます。残念ながら、打ったという手も、今にしてみれば稚拙なもので、流れを変えるほどのものではありませんでした。「みんなで渡ったら、みなコケた。」ということでしょうか。
 追い詰められた日本メーカーに残された手はあまりないでしょう。それでも、日本の大メーカーは、護送船団方式の体質が抜けないようです。カンフル剤として、少なくない資金援助を募ったり、各メーカーの不採算事業部を統合して効率性を高めるなど、他力本願の動きが中心です。しかし、ダメなものをいくら集めてもダメで、ダメさ加減は大きくなるばかりです。
 そのような中で例外といえるのが、シャープのケースです。様々な曲折がありましたが、シャープは台湾のEMS最大手のホンハイ社に売却されて、100%子会社となりました。これが、シャープにとっては幸いでした。私は直接的にはホンハイとは取引はありませんので、間接的に得た情報ですが、ホンハイは金銭的には、実にしみったれで、価値が無いとなれば舌も出さないといわれています。一方で、自社の事業を拡大する上で価値があるとなれば、まとまったお金をポンと出します。ただし、出しっ放しではなく、事業の遂行にあたっては口も出しますし、手も出します。ホンハイは、シャープを買収するにあたっては、既存事業との組み合わせを真剣に検討したことは、想像に難くありません。その結果として、シャープは短期間のうちに業績を回復させ、再上場を果たしました。海外の事業も拡大させています。
 改めて、低迷する日本のエレクトロニクスメーカーの再建を考えてみるに、その要因の根の深さに唖然としてしまいます。はたして、自社努力だけで更生の道があるのかどうか、経営陣の奮起を期待したいと思います。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. Huawei(中国の通信機メーカー大手)9/18
 Apple社のiPhone 11、Samsung社のGalaxy Foldに対抗するために、Mate 30 Proを発表。

2. Apple(米国のエレクトロニクス企業大手)9/20
 iPhoneの新モデルにおいては、重要部品にリサイクルされたレアアースを使用。

3. SUBARU(日本の自動車メーカー)9/23
 米国での自動車販売台数が累計で1千万台を越え、記念のセレモニー。

4. American Standard Circuit(米国の基板メーカー)9/23
 3年間有効なISO 9001:2015とAS9100Dの再認定を取得。

5. Plasma Etch(米国の装置メーカー)9/23
 プラズマエッチングを使って、ターゲット表面でモノマーを重合させ、薄いポリマー層を形成するプロセスを開発。

6. Google(米国のIT企業大手)9/20
 今後2年間で、ヨーロッパのデータセンターを整備するために、30億ユーロを投資。

7. Ford(米国自動車メーカー大手)9/23
 2014年〜2019年に生産された32万台以上でリコール。バッテリーの酸の漏出により発火の可能性。

8. Atotech Deutschland(ドイツの基板用薬品メーカー)9/24
 高信頼性基板の端子表面処理プロセスとして、無電解ニッケルめっきと、イマージョン金めっきの組合せを提案。

9. AT&S(オーストリアの基板メーカー大手)9/24
 埋込部品多層基板の電子回路をシュミレーションにより、パフォーマンスを推定。

10. nScrypt, Inc.(米国の装置メーカー)9/24
 マイクロディスペンサーを三次元制御して、はんだ、エポキシ樹脂、導電性接着剤、セラミックなどをポリマーでパッケージを成形。

11. Alpha(米国の電子材料メーカー)9/24
 ポータブル機器用に次世代の錫/ビスマス系低融点(170〜200℃)はんだを開発。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*10月7日、技術セミナー「1日速習! ウエラブル時代の印刷エレクトロニクス技術、〜基礎から材料・加工技術・プロセスの最新動向、応用展開、国内外のマーケットまで〜」情報機構、東京大井町きゅりあんhttps://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC191002.php

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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