#1929 / 鉄筋コンクリート製の電柱を考え直す

 9月の台風15号、10月の台風19号と、関東地方は直撃を受け、多くの地域で停電、断水の障害が長期間続いています。その反省として、電線ケーブル類は地下に埋設すべし、との意見が少なからず出ています。さらに、専門家コメントとして、欧米では、ケーブル類は全て地下に収められていて、外観上も見苦しくない、としています。日本でも同様の措置をすべきだと。
 これには、いくつかの点で、事実誤認があります。少なくとも、拙宅がある米国北東部のニューイングランドでは、状況は違っています。当地でも、ダウンタウンでは、たしかにケーブルの多くは地下に埋設されていますが、ちょっと中心街をはずれると、架空線だらけになります。甚だしいところでは、まるで蜘蛛の巣状態です。(添付写真をごらんください。)電線の地下埋設のコストは、架空線に比べて、はるかに高価なものになります。また、必要な工事も煩雑で長期間におよぶものになります。電力ケーブル、通信ケーブル、その他の各種ケーブルやパイプ類をまとめて管理するとなると、いろいろと面倒なことが出てきます。現実的に費用対効果を考えると、ケーブルの地下埋設が可能なのは、ダウンタウンのような人口密集地域に限られることになります。

 もう一つ注目すべきは、ニューイングランドで使われている電信柱が、ほとんど木製だということです。私は、ある時期から、注意して見ているのですが、鉄筋コンクリート製の電柱に出会ったことはありません。さすがに、高圧のケーブルとなると、木製電柱では対応できなくなるようですが、それでも鉄筋コンクリート製ではなく、鋼鉄製のパイプになります。今回の台風では、強風により多くの鉄筋コンクリート製の電柱が折れて、鉄筋がむき出し状態になっている様子が、報道されていました。一方、ニューイングランドでは、嵐で立木が倒壊したり、大枝が折れて、道が塞がれている様子は、よく報道されますが、電柱が折れる様子はほとんど見ません。
 これだけでは、状況証拠にすぎませんが、どうも、木製電柱は、鉄筋コンクリート製の電柱に比べて、機械的な強度が高いようです。弾性強度も大きいのではないかと考えられます。コスト的にもメリットがあるのかもしれません。少なくとも、密度や重量に関しては、木製電柱が有利といえます。重量が小さいだけに、取り扱いも楽でしょう。
 木材の優位性を示す別の事例があります。ニューイングランドでは、一般の住宅はほとんど木材で造られています。かつては煉瓦造りもあったようですが、最近の新築建造物は、基本的に木造です。さらに、最近では、かなりの高層ビルディングが木造になっているのです。添付写真が示しているように、6階建程度のビルが木造であることは珍しいことではありません。私が認識した範囲では、15階くらいの高層ビルがありました。
 木造といっても、木の質感を活かすような感覚的な理由ではないようです。写真でわかるように、木材は構造材として使われており、最終的に木材の表面は、壁材で覆われてしまいます。つまり、ビルが完成してしまうと、外観上は木造であることがわからなくなってしまうのです。ですから、構造材として木材を使う理由は、質感や外観上のものではなく、技術的な理由によるものだということができます。どなたか、本当の理由をご存知の方がおられましたらご教示ください。

 今回取り上げた、コンクリートや木材について、日本ではすでに評価は固まっており、議論の余地はないかのように見えます。日本の林業の衰退が語られるようになったのは、もうずいぶん以前のことのように記憶します。しかしながら、ニューイングランドの木材の使われ方をみていると、日本の林業にも、まだまだ活路を見出せる可能性があるように思えるのですが、いかがなものでしょうか。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. TPCA(台湾のプリント基板業界団体)10/1
 2019年のTPCA Showは、10月23日から3日間Taipei Nangang Exhibition Centerで開催。

2. Acumen Research(米国の市場調査会社)10/2
 世界の自動車用パワーエレクトロニクス市場は、2026年には233.5億ドルの規模に成長すると予測。成長率19.0%/年

3. Purdue University(米国)10/9
 ナノカーボン材料を使うことにより、二次バッテリーの寿命を飛躍的に長くすること同時に、充電時間の短縮を実現。

4. EU (European Union) 10/9
 次世代の5Gシステムにおけるサイバー攻撃のリスクを指摘。特に中国のが参加しないケースを憂慮。

5. TSMC(台湾の半導体メーカー大手)10/9
 米国の半導体メーカーArm社と協力して6nmプロセスでの生産を開始。CPU、GPU、DRAM、その他各種ICなど。

6. Fitbit(米国のウエラブル機器メーカー大手)10/10
 来年の始めから、同社のスマートウォッチの生産を、中国から他国へ移す計画。具体的な国名は明かさず。

7. IDC(米国の市場調査会社)10/10
 2019年第3四半期における世界のPC出荷は、前年同期比で3.0%増の7040万台。インド、カナダ、南米などが大きな成長。

8. National Audio Company(米国のデバイスメーカー)10/10
 従来型のカセットの需要が増大中。2015年の7.4万から、2018年には21.9万ユニットに。3倍増。

9. Intrisiq Industries(カナダの電子材料メーカー)10/10
 ナノ銅粒子のペーストを使って、実用的なプリント基板のビアフィルプロセスを実現。

10. Boeing(米国の航空機メーカー大手)10/10
 ドイツのスポーツカー老舗Porsche社と空飛ぶEV(電気推進自動車)を共同開発へ。

11. Gartner(米国の市場調査会社)10/10
 2019年第3四半期における世界のPCの出荷は、前年同期比で1.1%増の6812万台。トップはレノボ社、2位はHP。

12. Apple(米国のエレクトロニクス大手)10/11
 スマートフォンの新モデル、iPhone 11 and iPhone 11 Proについて、台湾のメーカー、アッセンブラーは、強気の部材オーダーを見込む。

13. Ametek(米国のエンジニアリグ会社)10/13
 プリント基板製造におけるワークのパネリング(面付け)について、組立を含めた、新しい設計ガイドをリリース。

DKNリサーチのイベントスケジュール
* 10月4日、技術セミナー「フレキシブル・デバイスにおける材料・加工の現在-医療・ヘルスケアを中心にウェアラブル用途を目指す-」、加工技術研究会、東京、北トピア、http://www.ctiweb.co.jp/seminar/dkn2019/index.html
*10月7日、技術セミナー「1日速習! ウエラブル時代の印刷エレクトロニクス技術、〜基礎から材料・加工技術・プロセスの最新動向、応用展開、国内外のマーケットまで〜」情報機構、東京大井町きゅりあんhttps://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC191002.php

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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