#1931 / 消費税率10%で変わる景色

周知の通り0月1日から消費税率が、これまでの8%から、10%に引き上げられました。しかしながら、今回の場合、さまざまな例外措置があり、課税システムとしては、極めて複雑なものになってしまいました。このため、テレビを始めとする各種メディアは多くの特別番組を組み、いかにして節税をするかを紹介しておりました。ために、それなりに蓄えのある人々は、不動産や、車、白物家電などの価格が高いものの前倒し購入に走ったために、メーカーにとっては一時的に大きな需要となったようです。あまり蓄えのない家庭では、せいぜいトイレットペーパーや洗剤の買いだめで、わずかばかりの節税に努めていたようです。私などはお金もなければ、買い物にいく体力もないので、結局何もしませんでした。テレビでは、9月30日になっても、「まだ間に合う節税対策」と称して、増税から逃れるアイデアを紹介していました。最後の日は、多くの小売店が大混雑で、日本中が消費増税狂想曲に踊らされているかのようでした。このような騒動を見ていると、日本人とは極めて扇動に乗せられやすい民族だと感じてしまいます。
 一方、10月に入って1週間ほどの間に、私はスーパーマーケットやドラッグストアなどで、数件の買い物をしたのですが、大きな変化に驚きました。全ての小売店でキャッシュレジスターが新しいものに替わっているのです。単に装置が新しくなっているだけでなく、支払いシステム全体が変わっているのです。共通していえることは、これまでに比べて、店員一人当たりの生産性が30〜50%は上がっているようです。ただし、これは新しいレジスターシステムに100%よるものとはいえず、店員スタッフと買い物客に負担を強いるものになっています。あるスーパーマーケットの例では、客が買い物かごに商品を入れて、レジスターの脇の台に乗せると、スタッフは、商品を取り出し、バーコードをスキャンして、清算済みのかごに入れます。以前でしたら、かごが空になったところで、合計を出して、支払い処理を行っていました。ところが、新しいシステムでは、支払いは別に自動支払機があって、客はそちらに移動して、機械を相手に支払い処理をすると、おつりとレシートが出てきます。店員は、客が支払い処理をしている間に、次の客のかごの商品のスキャンを始めています。客が不慣れなこともあって、スキャンに比べて、支払いの時間の方が長くなりがちです。そのような状況に対応するためでしょう、一台のレジスターに対して、2台の自動支払機が設置されています。結局、このようなシステムでは、一人のチェックアウトスタッフが、スキャナーと2台の支払機をみることになり、その忙しさは倍加しています。ちょっと息抜く余裕もなくなってしまい。精神的にも肉体的にもそうとう負荷がかかっているように見えます。私だったらば、かなりの頻度で間違いを起こし、トラブルメーカーになることは間違いありません。
 そのほか、客のセルフサービスによるチェックアウトシステムを入れた店がいくつか見かけられました。しかしながら、こちらの人気は今一つで、客の大部分はスタッフのいるレジスターの前に行列を作っています。日本では、セルフサービスのチェックアウトはなじまないのでしょうか。ちなみに、ニューイングランドの大規模小売店ではかなりセルフサービスによるチェックアウトシステムを入れていますが、客の人気は今一つです。私も一二度試してみましたが、何かと面倒なことがあり、今は人間のいるところに並んでチェックアウトすることにしています。
 何かとトラブルを起こしそうな新しいチェックアウトシステムですが、消費税率の引き上げによって、確実に儲かっている会社があります。それは、レジスターなどの装置メーカーとソフトメーカーです。日本で営業している小売店の数は何百万に及ぶでしょうが、おそらくそのうちの過半数が、今回新しいレジスターに入れ替えるでしょう。装置メーカーは、システムの切り替えに際して、新しい機能を持ち、生産性の高いモデルの導入を勧めるでしょう。新しい機能を持ったレジスター(システム)は、従来品に比べて、倍、3倍の値段になるでしょうが、それに見合った能力を持っているとの説明です。このようなシステム切り替えによる装置の需要は、大まかに見積もっても、1兆円を越えることでしょう。これだけの大きな需要が半年とか、数ヶ月の内に出てくるのですから、考えてみれば恐ろしいことです。このような市場は、外国メーカーにとっては、海外のメーカーにとっては極めて参入しにくく、国内メーカー、それも一部の専門メーカーの独壇場になるでしょう。穿った見方をすると、消費税率の切り替えは、日本の装置メーカー、ソフトメーカーの陰謀ではないかと勘ぐりたくなります。ただし、このような需要は一時的なもので、長続きするはずもなく、やがて反動が来ることでしょう。
 
DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. ETH Zurich(スイスの研究開発機関)10/30
 曲げるだけでなく、伸ばしたり捻ったりすることができるバッテリーを開発。この技術はたのデバイスにも適用可能。

2. Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)10/30
 2020年には、中国のODM生産による携帯端末の出荷を大幅に増やす計画。

3. Nokia(フィンランドの通信機器メーカー大手)10/31
 5G対応の技術開発をスピードアップするために、あらたに350名の技術スタッフを雇用。

4. Master Bond(米国の接着剤メーカー)10/30
 エレクトロニクス用に、熱伝導性が良好で、耐薬品性も良好な新しい二液性エポキシシーラントを発売。

5. Apple(米国のエレクトロニクス大手)10/30
 2020年に最初の5G対応iPhone 12を発売の計画。2020年中には、すべてのiPhoneが5G対応に。

6. Samsung Electronics(韓国エレクトロニクスメーカー大手)11/1
 ギャラクシー ノート10が好調で、第3四半期の利益は、この6四半期で最高を記録。しかし第4四半期は、コストがかさみ、減益の見込み。

7. IDC(米国の市場調査会社)11/1
 第三四半期における世界のタブレットPCの出荷は、前年同期比で1.9%増の3760万台。Apple社の新モデルが好調。シェアは31.4%。

8. Digitimes Research(台湾の市場調査会社)11/1
 第4四半期における台湾メーカーのテレビ出荷は、前期比11.2%増の822万台に達する見込み。前年同月比では15.3%の減少。

9. Institute for Supply Management(米国の市場調査機関)11/1
 10月のManufacturing Indexは、前月からわずかに上昇して47.8に。3ヶ月連続で50.0のレベルを下回る。

10. OM Group Electronic Chemicals(米国の化学品メーカー)11/4
 高密度基板の微小ブラインドホールの埋め込みを効率的に行う、新しい銅めっき浴を開発実用化。

11. Digitimes Research(台湾の市場調査会社)11/4
 2019年第3四半期における中国メーカーのスマートフォン出荷は、前期比2.5%減少の1.8億台。前年同期比では5.3%の減少。

12. Digitimes Research(台湾の市場調査会社)11/4
 2019年第4四半期における世界のタブレットPCの出荷は、前年同期比で4.5%増になる見込み。今年第3四半期の出荷は4432万台。

13. Fitbit(米国のウエラブルデバイスメーカー大手)11/5
 米国IT大手のGoogle社の買収提案を受諾。買収額21億ドル。Apple社やSamsung社との競争に打ち勝つ戦略。

14. IDTechEx(英国の市場調査会社)11/5
 2019年における世界のRAIN RFIDタグの市場は、前年比20%増の9億53百万ドルに。2024年には19.74億ドルまで成長と予測。

DKNリサーチのイベントスケジュール
12月6日、技術セミナー「フレキシブルエレクトロニクス最前線〜・材料・加工・生産技術と市場動向〜」、サイエンス&テクノロジー主催、東京大井町きゅりあん、 https://www.science-t.com/seminar/B191206.html

* 2020年1月20〜21日、「ウエラブルデバイスの印刷形成と材料に求められる課題」、最近の化学工学講習会、化学工学会関東支部主催、東京、早稲田大学55号館

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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