#1933 / 体制が上がらない台湾プリント基板業界

台湾のプリント基板業界の出荷データは、世界のエレクトロニクスの中で、毎月最も早く、しかも詳しい市場データとして発表されます。しかも、台湾は世界の民生用エレクトロニクスの生産センターといわれるほどに、モノと情報が集まっていますので、その数値を追っていれば、世界のエレクトロニクス産業の動きをいち早く把握することができます。
 先日も、10月のプリント基板の出荷動向、輸出入、原材料の動き設備投資の動向などが、次々と発表されています。これらのデータを分析してみますと、次のようなことがわかります。
 2019年のクリスマス商戦向けの生産は、着実に立ち上がってきていますが、その勢いは目をみはるというほどのものではありません。10月の出荷額は、前年同月比でみますと、1.1%の増加で、かろうじてプラス成長を維持している程度です。これまでの台湾エレクトロニクス業界が、毎年二桁に近い成長率を維持してきていたのに比べると、いかにも物足りない感じは否めません。フレキシブル基板は比較的順調で、この4ヶ月直線的に出荷額を伸ばしていて、欧米向けのモバイル機器の需要が堅調なことがうかがえます。それでも、前年同月比での成長率は、1.3%で、年初からの出荷額合計は、いまだに0.64%のマイナス成長に留まっています。上半期のスロースタートが、いまだに足を引っ張っている形になっています。硬質プリント基板は、この3ヶ月天井に張り付いたような状況で、伸びていません。この後は下落に向かうことになるでしょう。
 台湾プリント基板業界の今後の動向について楽観的になれないのは、原材料の動きが遅いことが要因としてあげられます。フレキシブル基板用銅張積層板などは、前年同月比で20%近い減少となっています。新規設備投資も弱含みで、マイナス成長が続いています。台湾のプリント基板メーカーは、セットメーカーやEMSメーカーと、極めて緊密なパイプを持っており、精度の高い中長期的な需要予測を持っています。そのような台湾のプリント基板メーカーが、原材料の調達や、設備投資を控えているということは、少なくともこの数ヶ月の需要予測を控えめに見ていることの表れといえます。
 ふりかえってみますと、この2年間、台湾のエレクトロニクス業界は、米国のアップル社のiPhoneに振り回されてきました。アップル社は毎年投入する新モデルについて緻密な販売計画をつくり、サプライチェーンのメーカーに対して、部材の調達計画を示します。しかしながら、2017年、2018年と続けて計画通りに販売が伸びず、シーズン途中で、計画を下方修正せざるをえませんでした。iPhoneという、エレクトロニクス業界のコア製品だけに、その影響は、サプライチェーンのメーカーばかりでなく、多くの部材メーカー、関連ビジネスの企業におよびます。
 この2年間の失敗に学んだアップル社は、2019年には慎重な計画を作ったようです。いままでのところ、販売は計画の想定内で推移しているようです。しっかりと利益も出すことでしょう。しかし、サプライチェーンにとっては、ほとんど、成長はありませんので、マージンは削られることになります。世界的にみても、今後スマートフォンが大きく伸びることは期待できませんので、これから部材メーカーとしては、限られた市場の争奪戦になります。みなさん、その準備はできていますか?

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. IPC(米国のプリント基板業界団体)11/14
 プロダクトロニカで、手ハンダの世界チャンピオン競技大会を開催。インドネシアEMSのI. Setiawan氏がチャンピオンで千ユーロを獲得。2位仏。

2. Hon Hai Precision(台湾のEMS最大手)11/19
 米国ウィスコンシン州で計画している新工場(投資額100億ドル)のアメリカ人従業員の教育訓練を台湾で開始。

3. University of Pittsburgh(米国ペンシルバニア州)11/20
 次世代のフレキシブルディスプレイの透明電極として、印刷加工が可能な金属マイクログリッドを開発。

4. Apple(米国のエレクトロニクス企業)11/20
 テキサス州オースチンに新しいキャンパスの建設を開始。投資額10億ドル。敷地3百万平方フィート。5000人を新規雇用。

5. MacDermid Alpha(米国の電子材料メーカー)11/20
 はんだ材料メーカーの老舗Kester社を12月2日付けで買収へ。米国、ドイツ、シンガポールの施設は製造を継続の予定。

6. ID TechEx(英国の市場調査会社)11/20
 2019年における世界のRFID産業の市場規模は、サービスやソフトを含めると116億ドルに。2024年には152億ドルに。

7. Intel(米国の半導体メーカー最大手)11/21
 パーソナルコンピュータ用のCPUの生産が大幅に遅れるとカスタマーに謝罪。少なくとも、年内は工程が極めてタイトな状況が続くと予想。

8. Apple & Intel(米国のエレクトロニクス企業大手)11/21
 悪質なパテントトロール(使われていない特許をネタに、企業を強請る会社)に対抗するため、協力して訴訟を立ち上げる。

9. Electronics Weekly(米国の業界メディア)11/21
 第1〜3四半期における、中国から米国へのエレクトロニクス製品の輸入は12%の減少。それでも全輸入額の54%でトップ。2位はメキシコ。

10. INDIUM CORP(米国の電子材料メーカー)11/21
 信頼性の高い接合を実現する、新しい低融点はんだ合金Durafuse(210℃)を実用化。

11. Foxconn(台湾のEMS最大手)11/25
 当初の計画を変更して、米国ウィスコンシン州グリーンベイ地区で、受託組み立てメーカーを買収へ。イノヴェーションセンターとして活用。

12. Apple(米国のエレクトロニクス大手)11/25
 台湾のサプライチェーンメーカーに対して、来年下期に発売される、iPhone 12は1億台を越える生産計画であることを通知。

13. OMNI PCB(米国のプリント基板メーカー)11/26
 セミアディティブ法を使って、超高精細多層基板を実用化。25ミクロンのL/Sを実現。回路層数を大幅に削減することに成功。

DKNリサーチのイベントスケジュール
12月6日、技術セミナー「フレキシブルエレクトロニクス最前線〜・材料・加工・生産技術と市場動向〜」、サイエンス&テクノロジー主催、東京大井町きゅりあん、 https://www.science-t.com/seminar/B191206.html

* 2020年1月20〜21日、「ウエラブルデバイスの印刷形成と材料に求められる課題」、最近の化学工学講習会、化学工学会関東支部主催、東京、早稲田大学55号館

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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