#1935 / 体制が上がらない台湾プリント基板業界(続き)

 前回、10月の台湾のプリント基板業界の出荷があまり思わしくない状況にあることを紹介いたしました。先週になって11月のデータが出てきましたが、その数値はさらに悪化してきています。11月の台湾の上場基板メーカーの出荷額合計は、613.4億台湾ドルで、前月から5.6%減少となっています。前年同月比では、0.3%の減少になります。ただし、品種による違いは小さくありません。硬質基板は、前月比2.7%の減少でしたが、前年同月比では2.6%の増加となっています。月ベースの動きでは、8、9、10月と高いレベルで推移していたものが、11月になっていくらか減少に傾向が出てきたというところです。
 これに対して、フレキシブル基板の11月の出荷額は、前月比で11.2%の二桁減少で、前年同月比でも5.9%のマイナス成長になっています。つまり、硬質基板がほぼ前年並みか、若干プラスになっているのに対して、フレキシブル基板は、6月から直線的に伸びていたものが、10月をピークにして、鋭角的に減少に向かっています。(添付グラフ参照)ピーク値はほぼ前年並みですが、平均値としては、地盤沈下しています。

 いいかえると、例年に比べて出荷のピークは、半月から1月早くなり、全体のレベルが下がっていることになります。昨年は12月に大きく下げたわけですが、今年がどうなるかは、極めて不透明です。昨年は、クリスマス商戦シーズン途中でアップル社が生産計画を下方修正し、サプライチェーンに大きな混乱をきたしました。これに懲りた各メーカーはそれなりに対策をこうじているものと考えられますが、それで対応できる範囲で収まるかどうかは、なんともいえません。ある報道によれば、11月における中国のiPhoneの出荷は、35%以上減少したとのことで、その影響が懸念されます。
 一般に、台湾の基板メーカーは、EMSメーカーや機器メーカーと密接なコミュニケーションを持っていて、精度の高い需要予測を作っていて、材料の調達や設備投資には慎重です。このところ、フレキシブル基板用銅張積層板の出荷は、前年同月比で二桁のマイナス成長が続いています。また、生産能力を増やすための設備投資には消極的になっています。つまり、台湾のフレキシブル基板メーカーは、今後の需要予測について悲観的な予測をしていることがわかります。今年の台湾のフレキシブル基板市場はマイナス成長に終わる可能性が出てきました。しかし、台湾のエレクトロニクスメーカーは実にタフです。これまで、市場の需要が低迷すると、必ずや新しい市場を創造し、長期的にはプラス成長を維持してきました。既存ビジネスが縮小していく中で、新しいビジネスを作り出す活動が進んでいます。
 一方、日本のフレキシブル基板業界の状況は深刻です。現在、日本のフレキシブル基板メーカーの主要ユーザーは米国のモバイル機器メーカーで、韓国メーカーや台湾メーカーとは競合関係にあります。その日本メーカーの出荷額は継続的に縮小してきており、年間あたりの減少率は20〜30%にも達しています。これは、業界がかなり差し迫った状況にあることを意味しています。早急に手を打たないと、業界全体が破綻しかねません。心配なのは、日本のメーカーに新しい市場をつくりだそうという気力が感じられないことです。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. Institute of Solid State Physics(オーストリアの研究機関)12/11
 これまでの材料に比べて、はるかに高いSeebeck変換効率を持つ、焦電材料を発見。IoT機器の実用化に多くの可能性。

2. Linköping University(スエーデン)12/11
 スクリーン印刷だけで、有機化合物のトランジスタアレイを作ることに成功。Aサイズの面積に1000このトランジスタを形成。

3. IDC(米国の市場調査会社)12/11
 2019年第3四半期におけるウエラブルデバイスの出荷は、前年同期比で94.6%増の8450万台。

4. IHS Market(英国の市場調査会社)12/11
 2019年第3四半期における、世界の5G対応端末の出荷は430万台。Samsungがトップで、前期比倍増。74%のシェア。

5. Samsung Electronics(韓国エレクトロニクス大手)12/12
 次世代のスマートフォン、ギャラクシーS11の新しいデザインを発表。4つのカメラを搭載、一つはディスプレイ側で、液晶画面に穴を開け搭載。

6. Plus.ai(米国のベンンチャー企業)12/11
 大型トレーラーによる、カリフォルニア州からペンシルベニア州までの自動運転によるバターの配送を41時間で達成。

7. DIGITIMES(台湾の業界メディア)12/12
 台湾のEMS最大手のFoxconnは、今後5G関連分野での事業拡大を目指して、FITやFIH Mobileなどの関連会社の方向性を大幅転換。

8. Apple(米国のエレクトロニクス大手)12/12
 11月における中国でのiPhone出荷は、前年同月比で35%以上の減少。2ヶ月続けての二桁減少。株価は1%の下落。

9. Rainbow Technology(英国の電子材料メーカー)12/13
 高機能プリント基板用に、次世代フォトエッチングレジストシステムを実用化。液状レジストをコーティングするので、高効率、低コスト。

10. Ventech (中国のラミネートメーカー)12/16
 需要の増大に対応するために、PTFEベースの銅張積層板の製造能力を大幅に増強。

11. IDC(米国の市場調査会社)12/16
 2019年における世界のウエラブルデバイスの出荷は3億ユニットに達する見込み。2023年には5億ユニットに成長と予測。

12. DIGITIMES Research(台湾の市場調査会社)12/12
 2019年11月における、世界のPCメーカートップ5社の出荷は、台数で2%の減少。

DKNリサーチのイベントスケジュール
*12月6日、技術セミナー「フレキシブルエレクトロニクス最前線〜・材料・加工・生産技術と市場動向〜」、サイエンス&テクノロジー主催、東京大井町きゅりあん、 https://www.science-t.com/seminar/B191206.html

* 2020年1月20〜21日、「ウエラブルデバイスの印刷形成と材料に求められる課題」、最近の化学工学講習会、化学工学会関東支部主催、東京、早稲田大学55号館

※すでに終了したセミナーや講演であっても、使われたテキストはデジタルデータで利用可能になっていますので、ご希望があればご連絡ください。

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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