#2001 / 素直に回復に向かわない世界のエレクトロニクス産業

 歳が改まり、メディアでは、景気の回復を期待する特集が目立ちます。市場は穏やかながら上昇傾向にあるとのことで、楽観的な予測が目立ちます。株式市場は最高値の更新が続いています。米中の貿易交渉が第一段階の合意に達したとの報道が流れると、株式相場は活況をていしています。
 しかしながら、エレクトロニクス業界の実情はかなりずれているといってよいでしょう。現代の民生エレクトロニクス市場を牽引しているのは、言わずと知れたスマートフォンですが、世界の出荷台数はすでに3年以上減少が続いており、近い将来に回復に向かうような動きはありません。また、スマートフォンの落ち込みを埋め合わせるような、新しいコンセプトの新技術や製品は見当たりません。業界やメディアは5Gを次世代の牽引技術として持ち上げていますが、具体的なビジネスとしてはなかなか先が見えてきません。
 実際の市場の動きを分析してみると、厳しい実情が見えてきます。世界の半導体市場は、一昨年の末に急落し、半年間低迷が続きました。添付したグラフが示していますように、昨年も下半期になるとようやく回復に向かいます。

当初は世界一斉に出荷が増加しましたので、一気に回復に向かうかとの期待が持たれますが、このところ失速気味になっています。米国はまだ出荷が増えていますが、勢いはなくなっています。中国やその他のアジア諸国は、11月に至ってほとんど横ばいか、減少となっています。今後改めて増加に向かうのか、それとも再び減少するのかはわかりませんが、少なくとも素直に回復に向かうとも思えません。
 民生エレクトロニクス業界の先行指標となる、台湾プリント基板業界の動向もあまり思わしくありません。添付したグラフは、昨年末までの出荷状況を示したものですが、一昨年ほどではないものの、大きく下落しています。12月の出荷額は、前月比では8.2%の減少ですが、前年同月比では15.7%の増加となっています。結果として、2019年通期の出荷額は、2018年に比べて1.5%のプラス成長となります。大きく下落した一昨年末との比較ですから、プラス成長といっても、とても回復傾向にあると言えるほどのものではありません。

 台湾のプリント基板メーカーは、セットメーカーやEMSメーカーと密接なコミュニケーションを保っており、精度の高い需要予測を得ています。その基板メーカーが、製造能力を増強するための設備投資には慎重になっており、銅張積層板など原料の調達も控えめにしているようです。また、各種電子部品市場の動きも活況といえるほどのものではありません。
 これらのデータから推定してみますと、世界の民生エレクトロニクス市場が本格的に回復に向かうには、まだしばらく時間がかかりそうです。
 これに比べると、日本のプリント基板メーカーの状況ははるかに悪く、脆弱な体質にあるといえます。早急に然るべき対策をこうじないと、最悪の事態も想定しなければならない状況です。

DKNリサーチ、沼倉研史(マネージング・ディレクター)
(dnumakura@dknresearch.com) Haverhill, Massachusetts, U.S.A.

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今週のヘッドライン

1. EPS NEWS(米国の業界メディア)1/3
 2019年12月における米国製造業のPMIは、前月から0.9パーセント下落して、47.2に。この十年で最低を記録。

2. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)1/6
 2019年には、スマートフォン、ギャラクシー5Gを670万台以上を出荷。5Gスマートフォンとしての世界シェアは53.9%。

3. Monash University(オーストラリアの大学)1/6
 従来のリチウムイオン電池に比べて、蓄電容量が4倍になるリチウム硫黄電池を開発。EVの航続距離1000㎞も現実的に。

4. IPC(米国のプリント基板業界団体)1/7
 2019年11月の出荷額は、前月比0.7%増、前年同月比17.2%増、年初からの累計は7.7%増、B/Bレシオは1.08。

5. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)1/7
 当初の計画に比べて、利益率が下落。一昨年からのメモリーチップ価格の低迷が影響。

6. Apple(米国のエレクトロニクス大手)1/8
 28年ぶりにラスベガスのCESに参加。ただし、新製品の紹介はなく、プライバシーの保護についてのプレゼンテーション。

7. CNN(米国のニュース専門テレビチャンネル)1/9
 2019年には、世界中で18000時間のインターネットのシャットダウンがあり、経済的損失は80億ドルに。最悪はインド。

8. Samsung Electronics(韓国のエレクトロニクス大手)1/9
 新しい曲げられるスマートフォン、ギャラクシーフォールドの販売台数は、4〜50万台。当初発表の百万台から下方修正。

9. Apple(米国のエレクトロニクス大手)1/9
 2019年12月の中国向けiPhoneの出荷は、前年同月比で18%増の320万ユニットに。

10. SK Innovation(韓国の二次電池メーカー大手)1/9
 米国で2番目となるEV用バッテリー工場をジョージア州に建設中。さらにハンガリーでも工場を新設へ。

11. DIGITIMES(台湾の業界メディア)1/9
 中国の大手プリント基板メーカーは、5G関連機器用のプリント基板の需要増を見越して、製造能力を増強へ。

DKNリサーチのイベントスケジュール
*12月6日、技術セミナー「フレキシブルエレクトロニクス最前線〜・材料・加工・生産技術と市場動向〜」、サイエンス&テクノロジー主催、東京大井町きゅりあん、 https://www.science-t.com/seminar/B191206.html

* 2020年1月20〜21日、「ウエラブルデバイスの印刷形成と材料に求められる課題」、最近の化学工学講習会、化学工学会関東支部主催、東京、早稲田大学55号館

※すでに終了したセミナーや講演であっても、使われたテキストはデジタルデータで利用可能になっていますので、ご希望があればご連絡ください。

最近のDKNリサーチの論文、出版物
*「デザイン革命、見せる魅せる透明フレキシブル基板」沼倉研史、JPCA NEWS, NO.591,2017年12月
*「ウェアラブル時代に向けての新しい加工技術」沼倉研史、コンバーテック、2018年6月号、加工技術研究会
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、

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