#2101 / 2021年、台湾は好スタート

 2021年がスタートしました。昨年は、世界中が新型コロナウィルスの感染に振り回され、年が改まっても、感染拡大はとどまるところを知らず、今後の経済の見通しをつけにくくなっています。そのような環境の中で、エレクトロニクス産業の一部は、昨年後半から業績が急回復してきており、今年の成長率はかなりかなり高いものになると予想されています。その典型的な例が、台湾のエレクトロニクス産業です。台湾は、新型コロナウイルスの防疫についても、徹底的な水際対策が功を奏し、 感染者、死者ともに極めて低いレベルに押さえ込むことに成功しています。海外への渡航、海外からの入国には厳しい制限が課されていますが、 国内での生産活動や輸出入は通常通りの業務が行われています。
 昨年の台湾エレクトロニクス業界の動きは、かなり異常なものでした。特に、プリント基板の出荷は例年とは違っていました。まず、硬質基板 の出荷は第2四半期から、前年比プラス成長になり、堅調な操業が維持されており、通期では、4.9%の成長となりました。 これはコロナウイルスによる世界的なリモートワークが普及したために、それまで縮小傾向にあったパーソナルコンピューター、特にノートブックPC、タブレットPCの需要が プラス成長に転じたことが大きく寄与しているものと考えられています。何しろ世界で消費されるパーソナルコンピューターの9割以上は、台湾、もしくは台湾メーカーの中国工場で組み立てられているのですから、そこで増えた高密度硬質プリント基板は、そのまま台湾の多層基板メーカーに発注されることになります。
フレキシブル基板の様子は少し違っています。昨年、アップル社のフラッグシップ製品の新モデルiPhone12は、リリースが当初の予定よりも1ヵ月以上遅れてしまいました。このため台湾のフレキシブル基板メーカーの生産も、当初の計画から大幅に遅れてしまい、量産は10月までずれ込んでしまいました。しかし ながら、その後の追い込みはめざましく、12月の出荷額は、前年同月比で59.2%の大幅増加になっています。その結果、2020年通期での出荷額は、前年比で5.6%の成長を果たしています。10月までは マイナス成長の状態でしたから、最後の2ヶ月で大きく挽回したことになります。硬質基板とフレキシブル基板の合計では、5.6%のプラス成長となっています。
 台湾のプリント基板出荷額は、12月から翌年2月にかけて、大きく減少する傾向にありますが、今年の場合どうなるかが注目されます。
 台湾の半導体業界も活況にあります。世界の半導体業界は、2020年下半期において連続して増加傾向を維持していて、単月での出荷額の最高記録を更新しています。台湾の半導体産業の大部分は、受託生産ですが、世界最高の技術レベルを持っており、世界中の主要半導体メーカーから生産の委託を受けています。 世界の半導体業界は、昨年末から供給不足の状況にあり、市場の需給 バランスは逼迫しており、特に自動車産業においては、半導体不足によって、工場の一時帰休にまで追い込まれる状況になっており、今後、市場価格は上昇することが予測されています。
 また、米中貿易摩擦により、台湾メーカーは、中国にある工場を引き上げる計画が進んでおり、台湾では今後慢性的な人手不足が予測されます。特に教育レベルの高いエンジニアの需要が大きくなると考えられています。
 日本のエレクトロニクス産業と比べながら、台湾のエレクトロニクス産業の動きを見てみると、台湾メーカーが、「棚からぼた餅」式に仕事を得ているような印象を受けますが、決してそのような仕組みになっているわけではありません。台湾メーカーは、これまでの実績に加えて、あらたな技術を開発し、強力な営業ネットワークを駆使して、世界中からビジネスを獲得して、市場のシェアを伸ばしています。一方、日本メーカーは、営業力で劣勢にあり、かつて優位にあった技術においても、追いつかれ、抜かれつつあります。今後、しっかりと対策をこうじていかないと、差は広がるばかりでしょう。

DKNリサーチ 
マネージングディレクター 沼倉研史

今週のヘッドライン

  1. Foxconn(台湾のEMS最大手)1/4
    2022年のEV事業化へ向けて、中国の自動車メーカーByton社とパートナーシップを結んでSUVを生産する計画。
  2. Huawei(中国の通信機メーカー大手)1/5
    中国のHuawei社は、2021年の大手スマートフォンメーカートップ6社からはずれる見込み。
    Samsung, Apple, Xiaomi, OPPO, Vivo, Transsion。 6社の合計シェアは80%
  3. Li-Cycle(カナダの化学メーカー)1/5
    米国ニューヨーク州Rochesterに1億75百万ドルを投じて、世界最大のリチウムイオン電池の処理工場を建設へ。年内に稼働の予定。
  4. Pegatron(台湾のEMS大手)1/5
    ヴェトナムでの生産を開始するために、2290万米ドルを投じて、現地に工場用地を手当。2021年中に操業開始の計画。
  5. Foxconn(台湾のEMS最大手)1/6
    2020年12月の出荷額は、前年同月比32.3%増の7137.8億台湾ドル(255.1米ドル)で、新記録。前月比では4.8%増。
  6. IDC(米国の市場調査会社)1/7
    世界の中古スマートフォン市場は、2024年には3億5160ユニット(650億ドル)に達すると予測。
  7. Hyundai(韓国の自動車メーカー大手)1/8
     EVの実用化へ向けて、米国のApple社との間で、協業の可能性を健闘する交渉を開始。
  8. Auburn University(米国アラバマ州)1/10
    エアロゾルジェットを使ったアディティブプロセスで、10ミクロン未満のL/Sで、多層フレキシブル基板を実現へ。
  9. Apple(米国のエレクトロニクス大手)1/10
    5年後のEVリリースで、2300億ドルの高級車マーケットを目指す。新分野を、技術提携、M&A、合弁など様々な選択肢。
  10. TI(米国の半導体メーカー大手)1/11
    今後EVの普及のキーになる、ワイヤレスバッテリーマネージメントシステムの実用化を強力に推進。
  11. CAIST(中国の市場調査機関)1/11
    2020年における、中国のスマートフォンの出荷は、前年比20.4%減少の2億96百万ユニット。
  12. IDC(米国の市場調査会社)1/12
    2020年第4四半期における世界のPCの出荷は、前年同期比26.1%増の9160万ユニット。コロナによるリモートワークが需要を押上。
  13. TPCA(台湾のプリント基板業界団体)1/13
    12月における台湾のプリント基板出荷額は6900億台湾ドルで、前月比3.2%の減少、前年同月比24.0%の増加。第4四半期のフレキシブル基板の反発が際立つ。
  14. TPCA(台湾のプリント基板業界団体)1/13
    2020年における台湾基板産業の出荷額:6672億台湾ドル+5.6%
    硬質基板、Unimicron,Compeq,Tripod,Hannstar,Nan Ya PCB, Kinsus
    フレキシブル基板:ZD Technology, Flexium, Career Tech, Ichia

DKNリサーチのイベントスケジュール
*2020年11月30日午後1:00オンラインセミナー「厚膜印刷回路技術の最新動向―製造プロセス、導電性インク、絶縁・機能材料技術応用展開まで」沼倉研史、サイエンス&テクノロジー主催、https://www.science-t.com/seminar/B201100.html
*2020年8月26日午前13:00オンラインセミナー「モノコック印刷回路—三次元配線のための新しい回路技術」沼倉研史、ピーバンドットコム www.p-ba.com
*2020年8月27日オンラインセミナー「モノコック印刷回路」沼倉研史、サイエンス&テクノロジー https://www.science-t.com/seminar/B200840b.html
* 2020年1月20〜21日、「ウエラブルデバイスの印刷形成と材料に求められる課題」、最近の化学工学講習会、化学工学会関東支部主催、東京、早稲田大学55号館
※すでに終了したセミナーや講演であっても、使われたテキストはデジタルデータで利用可能になっていますので、ご希望があればご連絡ください。

最近のDKNリサーチの論文、出版物
* 連載「ポリイミドフィルムものがたり」沼倉研史、コンバーテック、加工技術研究会
* 連載「厚膜印刷回路入門」沼倉研史、エレクトロニクス実装技術、Gichoビジネスコミュニケーションズ
*「耐熱性透明フレキシブル基板の材料と加工技術」沼倉研史/溝口昌範、エレクトロニクス実装技術、2018年6月号、
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